+ シューベルト「魔王」 +

日本語訳 by Schunchi

夜風をついて、誰がこんな夜更けに馬を走らせているのか。
それは、父と彼の息子だった。
父は息子を腕に抱え、息子を暖かくしながらしっかりとつかんでいる。

息子よ、おまえは何におびえ隠れているんだい。
見てよ!!お父さん。お父さんには、魔王が見えないの?
冠をつけ、長い尾の生えた魔王が見えないの?
息子よ、それはたなびく雲だよ。

愛らしい、子供。おいで私のもとへ。
すごく楽しい遊びをしようね。
岸辺には色とりどりの花が咲き乱れ、
私の母は金色の服をたくさん持っているんだよ。

「お父さん!お父さん!」聞こえない?
魔王が僕に低い声でささいているよ!
静かに!!落ち着きなさい!坊や。
枯葉に風がざわめいているんだよ。

かわいい子供よ。私と一緒に行こう。
私の娘たちは夜通し輪になって踊り、お前を寝かしてくれるだろう。
彼女たちは、君をゆすり、踊り、歌いながら.....

お父さん、お父さん!
そこの暗く薄気味悪い場所に魔王の娘たちが立っているのが見えないの?
坊や!お父さんにはそれが見えているよ。
それは、古い柳の木が灰色のように見えているだけなんだよ。

私は、お前が好きだ。お前の美しい姿は、私の心をゆさぶる。
素直にいうことを聞かなければ、腕ずくでも連れて行くぞ!!

お父さん!!お父さん!!
僕は今彼に捕まった!
魔王が僕を痛めつける!

父は、その恐ろしい光景に身の毛がよだちながらも馬を急がせた。
うめき声を上げている我が子を抱きかかえ。やっとの思いで家にたどり着いた。
しかし、子供は彼の腕のなかで既に息絶えていた。


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